カワイーヌ・ティトの北欧生活

北欧で暮らすハバニーズ、ティトと飼い主Matte&Husseの日常

夏の旅。トナカイと生きる

旅の続き、第2弾。

鮭の川をあとにした私達はそのまま北上し、KERO(ケロ)というお店を目指しました。KEROはトナカイの皮や毛皮などを使った商品を企画、製造、販売している会社です。

www.kero.se

サーメ人

スカンジナビア半島北部にはサーメ人(サーミ人)と呼ばれる先住民族が暮らしています。スウェーデン北部にもコミュニティーがあり、Husseの父方のご先祖様もサーメ人。現在は兼業されている方がほとんどだそうですが、元々彼らの生活の中心はトナカイの遊牧です。スウェーデン北部ではよくトナカイも食べますし、毛皮や手工芸も頻繁に目にします。っていうか道路ではトナカイが普通にお散歩しています。

パカパカ

 

トナカイは車を怖がりません。それ故平気で車道をのんびり歩いています。車は緊急以外では彼らに対してクラクションは鳴らしませんし、ゆっくり運転して邪魔しないように気をつけます。

その辺を自由に歩いているトナカイをどうやってまとめているのだろう、と不思議に思いHusseに訊ねてみましたが、彼もわからないとのこと。いつかサーメの方に聞いてみたい...。その時に気をつけなければならないのが、全部で何頭飼っているのかという質問は御法度ということ。それ即ち、彼らの財産を訊いているようなもの、だそうです。確かに。

KERO

冒頭でご紹介したお店KEROのモットーは、持続可能な(耐久性のある)商品の提供。トナカイを扱うが故、サーメ人とも深い関わりがあります。その背景には生態系を壊さない狩猟、自然、技術、雇用、そして消費者へのアプローチなど、全てを考慮する必要があるとの事。文化などの伝統を守りつつ、新しいデザインも取り入れ攻める姿勢も忘れない!らしいです。

え?こんなところにあるの?って言うくらい何もないのどかな場所に突然現れるKERO。本数はとても少ないですが、近くまでバスもあるようなので旅行者も来られます。たぶん。

工場&お店

 

私はずっとここに来たいと思っていました。柔らかくていつまででも触っていたくなるようなトナカイ皮のバッグや靴、錫の装飾をあしらったアクセサリーなど、現地で何か買いたいと思って楽しみにしていました。

犬も店内に入ってもいいけれど、ずっと抱っこしていて下さいと言われました。トナカイの匂いは犬にとって魅力的らしく、マーキングしたり商品を噛んでしまう恐れがあるのだとか。前回の記事と同様、Husseにティトをお願いして私は商品を物色。そして購入。

ショルダーバッグ

 

 

KEROのロゴとスウェーデンカラーのタグ、そして皮にはトナカイの刻印。見た目以上に沢山入りますし、何よりも柔らかくて体になじみます。嬉しい...。大事にしながら一生使っていきたいです。旅の良い思い出にもなりました。

そしてもう一つ、バレッタのキットを買いました。

 

錫の糸にトナカイの皮、金具とテグス、そして説明書。買った後にこの説明書を読んでみたら、鱧みたいに超あっさりな説明文と図解で笑いました。いきなり本番はちょっと怖いので、代用材料で一度試しに作ってみようと思います。できるかなー。

サーメ人と非サーメ人

だいぶ前に日本で流行ったこのブレスレットも、トナカイの皮と錫を使ったサーメ人の手工芸です。

 

ボタンはトナカイの角で作られています。これらは別の地域のウィンターマーケットで買ったモノですが、今でも私は気に入っていてよくつけています。

 

スウェーデンに来たばかりの頃、このブレスレットの作り方を正しく教わりたいと思いました。Jokkmokk(ヨックモック)にあるサーメ文化のミュージアムに行ったり、知り合いを通じて教われないものかと訊ねましたが、答えはいいようなダメなような...グレー。あまり快く思われなかったのを覚えています。

サーメ文化に限らず、代々受け継がれている民族工芸を教わろうと思っても簡単にはいきません。彼らと信頼関係を築き上げ、文化や歴史を直接学んだり感じ取る事がまずは大事、とおっしゃっていました。

時間をかけて絆を深め技術を習得したとしても、例えばその技術を商売にされるのはあまり良い気分ではない、と人伝いにきいた事もあります。私が読んだ本(下記写真)にも、サーミ以外の人は彼らの手工芸品を作って売るべきではないと記されていました。非サーミはその境界線に敬意を払うべきである、と。モラルの問題、ということでしょうか。それは数十年前の本なので、実際今はどうなのかわかりませんが。

 

私がコンタクトをとった人はかなり保守的な方だったと思われます。現代の世の中では探そうと思えば情報はいつでも手に入り、作り方は独学でも学べます。北スウェーデンにはサーメ人でなくとも作って販売している人はいるとの事。何事も良い面と悪い面があります。保守的だからこそ守られてきた事もあるでしょうし、だからこそ廃れてしまった部分もあるはず。でもそれは外部の私がとやかくいうことではありません。私には誰かと絆を深めて技術を学ぶほどの熱量はありませんでした。与えられた自由の中で最大限に遊ばせて頂く!これで十分です。

 

ちょっと話が逸れてしまいました。旅行に戻ります。

最初は私と見ていたHusseとティトですが、早々に飽きて店外へ。Husseは近くでアイスを買い、食べながらKEROのご近所さんとお喋りを楽しんでいました。ティトはそのご近所さんに愛でられデレデレ。楽しく時間を潰してくれていたので私も罪悪感が少なくて助かりました。一緒にその辺をブラっと散歩してティトは排泄を済ませ、KEROを出発。宿までの道すがらもう一箇所立ち寄りました。

その様子はまた次回!