カワイーヌ・ティトの北欧生活

北欧で暮らすハバニーズ、ティトと飼い主Matte&Husseの日常

SÖTNOS TITO

Titos svenska liv med Matte och Husse

羊達は悪くない(泣)

先日、毛糸を買いました。

毛糸と言ってもその種類は沢山あります。アルパカ、モヘア、コットン、もしくは化繊などなど。素材によって風合いや温かさ、洗濯方法なども変わってきます。

私は買ったのはmade in SWEDENの100%ウールの毛糸です。南スウェーデンのバルト海に浮かぶ長細い島、Öland(ウーランド)にあるullcentrum(ウールセントルム)というお店の糸です。

www.ullcentrum.com

Z拠りの毛糸

 

2本の糸を撚ったもの。3色。

 

これでまたミトンを沢山編む予定...って実はもういくつか出来上がっているのですが。

今日は編み上がったミトンについてではなく、原材料である羊毛について少し掘り下げようと思います。

made in SWEDENって何が?

made in SWEDENと銘打っていても、実は羊毛はニュージーランドなどから輸入していて、紡績だけスウェーデンで行なっている場合が沢山あります。毛糸玉には記載されておらず、製造元のHPなどで注意深く読んでいくと小さく書いてあったりします。これはスウェーデンの羊毛産業の大きな問題であり、闇でもあります。

捨てるのに買う

スウェーデンには約60万頭の羊がおり(2019年調べ)、20年前に比べると35%も増えています。そしてその羊達の毛は、毎年刈りとられます。寒い国ですからね、さぞかしウール製品が充実しているんでしょうね、とお思いになるでしょうが、全く違います。刈られたウールのなんと80%が、燃やされたり埋め立てられたりして処分されています。ということは、ウールってあまり必要とされていないのか?いえ、これも違います。捨てているのにニュージーランドやノルウェー、ドイツ、トルコなどから羊毛を輸入しています。なんてこった!!

スウェーデンの羊毛は品質としてはとても素晴らしいと言われています。繊維は細く光沢があり、汚れにも強く保温性もばっちり。なのになぜこんな問題が起こるのかというと...。

ノルウェーに学べ!

簡単にいうと、羊毛産業のシステム構築が難しいとされているからです。

羊の毛も品種によって、または体の部位によってその品質はかわります。スウェーデンではそれを選り分ける基準段階が少なく、また牧羊業者の数は多いけれど小規模なので、システムが取り入れにくい(コストが合わない)ようです。全てを無駄なく選り分けて販売するよりも、良い部分だけ売ってあとは捨てた方がコスパ良し。なんだか悲しい...。それは彼らだけのせいではないのだけれど。

隣国ノルウェーでは品質基準が16段階にも分かれており、それぞれに合った製品ルートも確立されています。人材育成にも力をいれており、筆記&実技試験、見習い期間2年を経て、羊毛の品質を見極めるプロもいるんだとか。しかしそれらのシステムは羊毛業者のみでは当然成せるわけではなく、国も協力して取り組んでいるそうです。実際、粗い毛などは吸音材や断念材としても優れており、公共事業の一部にも使われているんだとか。

少しずつだけど

スウェーデンにとっては課題が山積みですが、危機感を覚えた自治体や羊毛産業、アパレル企業などは少しずつ改善を試みています。数年前に日本で大流行したカンケン(コンケン)のリュック。そのブランドであるフェールレーベンは、スウェーデン産の羊毛のみを使った製品を販売し始めました。

冒頭に戻ります。私が毛糸を買ったullcentrumも、本来は捨てられるはずの羊毛をウーランドや南スウェーデンから集め、カーディング(繊維を均等にならす)や紡績ルートも独自で開拓し少しずつ発展を遂げてきました。とはいえ、彼らは多くを望んでいません。

生産は小規模でも、従業員が良好な状態で、限りある資源を無駄に消費しない。それが彼らのヴィジョンだそうです。足るを知る、という事でしょうか。1998年にスタートした企業ですが、その当時からSDGsの基盤となるような考えをお持ちだったようです。

動物としての尊厳を。

オーストラリアでは未だに行なわれているミュールシング。ご存知でしょうか。沢山の毛がとれるように太らされた羊は、皮膚がひだになっています。そのため、お尻部分の皮膚も垂れ下がって、毛が糞尿で汚れてしまいます。それを防ぐため、その部分を肉ごと麻酔なしで切り取ります。それをミュールシングと言います。子羊達は血を流しながら生活します...。オーストラリアのメリノウールは非常に優れた品質なので、少しでも多くの毛を効率よく生産するため、そんなことまでも人間はやっています。当然多くの国が非難し、スウェーデン企業のH&Mもオーストラリア産メリノウールは使用しないと宣言しています。日本のユニークなクロージングは段階的に取引停止と言っているようですが、まだ完全に停止していません。けっこう前から言ってるけれど。

ただ、羊達はもう品種改良(改悪?)をされて皮膚にひだが出来る体になってしまっています。私達消費者然り、不買運動を行なったからといって羊達の生育環境が良くなるかというと、そうではありません。根本的な問題を解決しない限り、羊達の生育環境は変わらないでしょうし、羊毛産業に携わる方々の生活も改善しません。本当は大手企業が不買などせず、国と協力して羊達の生育環境や労働設備及び環境の改善などに努め、ずっと取引を続けていくことが理想だと思うのですが。

人は直接見えないものは見なかったことになる場合があります。例えば羊と私達の間に人や時間や作業工程が入れば入るほど、感情が希薄になり欲求だけが盛り上がります。如何に安く、どれだけ美味しく、少しでもお得に、と。私もそのうちの一人。ラム肉は大好きですし、タマゴもぱくぱく食べます。賞味期限が過ぎてしまって食べ物を捨てることも。お恥ずかしい。

私には羊達を救うアイデアも思い浮かびません。わーわーブログで書いているだけ。でも読んだ方が少しでも心に留めて下さったら嬉しく思います。普段お店で売っている、または着ているウール製品には様々な背景があるんだな、と。

 

ちょっと長くて重たい内容になってしまいましたが、私が大好きな編み物からでも学べることは沢山あると勉強になりました。微力ながら私もスウェーデンのウール産業を応援したい...。って結局毛糸を買うことくらいしか思い浮かばないんだけれど。あぁ超微力...。

日本からでもullcentrumの糸は買えるようです。

www.clever-co.jp

www.nordvisions.com

ご興味のある方は是非ご覧になってみて下さい。