カワイーヌ・ティトの北欧生活

北欧で暮らすハバニーズ、ティトと飼い主Matte&Husseの日常

ティトの吠え声 < 賛美歌

階下に住むカップル

私達の家の真下には、60代前半の男性が住んでいます。仮にOさんとしましょう。4年前、私達が引っ越して来た時には奥さんがいましたが、彼女は2年前に癌で亡くなってしまいました。しばらくシングルとして過ごしていたOさんですが、昨年新しい彼女が出来て、同棲を始めました。

 

彼女、EさんはOさんよりも年上で、60代半ばです。何故そこまで分かるのかというと、EさんはHusseの父親の元同僚で、Husseも顔見知りだったためです。さすがは小さな街。良くも悪くも情報はよく行き届いています。Husseのお父さんは彼女に意地悪を言われていたため嫌いです。Husseも一度彼女を車で家まで送ったことがあるそうですが、運転に関して色々うるさくて嫌だった、と言っていました。そんな方がまさか下に住むとは。

嫌な印象があっても、いや、あるからこそ、出くわしたときは隣人として気持ちよく挨拶をしましょう。決して深入りせず噂話もせず、当たり障りなく過ごしましょう。

Eさんが引っ越してくると知った時、Husseとはそんな風に話していました。

 ティトに対して

ティトを迎えた時、Oさんには一応挨拶していました。きっと家の中を走り回って、その音が響いてしまうと思う、と。そして鳴き声もうるさいかもしれないけどすみません、と。隣りの男性からは苦情がきてしまいましたが、Oさんは全く気にしないからいいよ、と言ってくれました。

でもEさんは鳴き声に関してなんとなく嫌そうな感じでした。私達の先入観も影響しているかもしれませんが。

そんな時。事件です。

今年の春、Husseとティトと家でのんびりくつろいでいたある晩のこと。ティトがいつものように何かの音に反応して、突然吠え出しました。急いでティトを止めましたが、どこかのドアが開く音もしませんでしたし、足音も聞こえず、Husseとなんだ?と不思議に思い、耳をすませてみました。

すると、助けてー!という女性の叫び声がどこかから聞こえてきました。私はティトを抱きかかえ、Husseは急いで玄関の扉を開けて確認しました。

 

私達6世帯が入っているアパートの地下には洗濯室があります。違うブロックの住民も含めた数世帯が、予約制で使用できるようになっています。そんな洗濯室がある地下から、その叫び声は聞こえてきました。

Husseに続いて私も急いでいくと、Eさんが倒れていました。どうやら洗濯室を出てすぐ、入口にある段差につまずいて転んでしまい、腕を骨折した模様でした。HusseはすぐにOさんと救急車を呼び、Eさんはその後運ばれていきました。

 

室内を静かにして、よーく耳をすましてようやく聞こえたEさんの叫び声。我々よりも洗濯室から近い部屋にいたOさんは、テレビをつけていたため気付かなかったようです。Eさんの戻りが遅いと気付くまでには、きっともっと時間がかかったでしょう。骨折したEさんはそれまで叫び続けなければならなかった、ということになります。ティトの聴力と警戒心がEさんを早く救ってくれる事となりました。

怪我のあと

Eさんは数日後に手術をし、しばらくは自宅療養していました。階段でばったり会った時に傷を見せてくれましたが、二の腕の部分にズバッと痛々しく切り刻まれていました。そしてティトに感謝。その後ことあるごとにティトを”私の恩人”と言うようになりました。吠える声は響くし、Oさんが気にしないとは言え、Eさんから何か言われたらイヤだな...と思っていた私達も、それから少し気が楽になりました。もちろん、Eさんの怪我はお気の毒ですが。

吠え声には相変わらずびっくりして困りますが、あの時はよく聞き取ったね、とティトを誉めています。まぁティトからしたら、は?でしょうけど。

そして最近

Oさん&Eさんはキリスト教徒です。午前中や週末にはよく教会に行っています。そこで出会ったのでしょうか?ってそんなことはどうでもよく。

最近、午前中にどこかから爆音で音楽が聞こえてくる事が度々あります。お隣さんかな?と両隣の壁に耳を当てて確認してみましたが、どうやら真下である事に気付きました。なになに?朝からパーリー?と思い、意識して音楽を聴いてみると。

それは賛美歌でした。爆音が故に神聖っぽさゼロ。

そうか、その音量出すならティトの声も気にしないよね。そもそも、朝からなかなかパンチの効いた過ごし方してるよねって、何かが吹っ切れた私なのでした。